色気のない僕ら
「ちょっ、なんだよ!」
「バカ!」
「はぁぁ⁈」
何キレてんだよ、こいつ。
そう思った俺が彼女の顔を見たとき。
もう何も言えなくなった。
めいっぱい俺の腕、引っ張ったくせに。
今は弱々しく掴んでるだけ。
言葉は勢い良かったのに。
今は俯いてるだけ。
「…悪ふざけがすぎました。ごめんなさい」
だってさ。
俺だって男なわけ。
そりゃ本能が出ることだってありますよ。
でも未遂にせよ何にせよ、それが彼女を傷つけてしまったなら。
それは謝らなければいけな…。
「…んっ?!」
そんな思考は途中で途切れた。
なぜなら。
俺の視界にはめいっぱいに彼女の顔があり。
俺の唇には彼女の唇が重なっていたからだ。
「なっ…!」
触れていた時間僅か数秒。
何してんだよ!と言う間もなく離れた唇は。
名残惜しささえ残していた。