滋養強壮きゅん補給【壁ドン企画】
編集部のフロアの奥にある給湯室。
小さなガスコンロがあるキッチンと、冷蔵庫と食器棚。
そんな狭いスペースに足を踏み込むと、先客がいた。
「おー、平井も休憩?」
換気扇の下でタバコをくわえながら、背の高い男がこちらを見た。
伸びた黒い髪を無造作に後ろに一つに縛って、長い足を軽く組んでキッチンのシンクにもたれかかるリラックスした姿勢。
そんな片桐の姿はもう何度も見てるっていうのに、いちいちドキっとしてしまう自分が悔しい。
「うん、徹夜になりそうだからドーピングしとこうと思って」
私は平静を装ってそう言いながら、冷蔵庫から買い置きしておいた栄養ドリンクを出した。
そんな私の手元を見て、片桐が何かに気づいた顔をする。
なんだろう、と思って片桐の視線の先を見ると、ネイルが剥がれた右手の薬指。
あ、っと思って慌てて右手を体の後ろに隠した。
うわ、恥ずかしい!
似合わないピンクのネイルなんて塗ってるのに気づかれただけでもなんだか照れるのに、その上ネイルが剥げてるのを見られたなんて。