『スキ』だと言って!
*
腰に巻かれたカフェエプロンで濡れ手をそっと拭い、
飾り彫りの施された真っ白なドアに向い、深呼吸。
――――コンコン
「はい」
心地良いテールボイスが扉の先から漏れ聴こえ、
「お夕食の準備が整いました」
「ん、直ぐ行く」
「はい」
いつもと同じ。
何てこと無いありきたりな言葉。
別に不満がある訳じゃない。
むしろ、彼の傍に毎日居られるのだから、
これ以上嬉しい事は無いんだけど……。
だけど……――……。
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