思い出の場所で①
すると、
「修一先輩、山口。
修一先輩と一緒に来たかわいい子、クリパに呼べないかな?」
ノーテンキな声が聞こえた。

俺は無視することに決めた。
山口も同じらしい。

メールは亜弥からで、

『修ちゃん、山口くん。ごめんね。
私には場違いみたいなので先に帰ります。
追伸 コート忘れたので、修ちゃん、家まで届けてくれると嬉しいです』

読み終えた俺は、財布から亜弥と2人分の飲み代を山口に渡すと、
「亜弥、先に帰るみたいだから俺も帰るわ。
山口、あとはよろしく」
そう言って、亜弥のコートに目配せをして、わざと置いて店を出た。
そして走り出す。

こんなときの亜弥の行き先は…

俺が向かったのは、高校の体育館。
俺と根本がバスケで汗を流し、そんな俺たちを亜弥が見守ってくれていた、俺たちの大切な場所。

やっぱり…
その外玄関に亜弥は座り込んでいた。

「亜弥」
ちょっと遠くから名前を呼ぶと、
「修ちゃん!」
驚いたように立ち上がる。
その瞳には、涙が滲んでいた。

それを見た瞬間、俺の中の何かがキレた。


< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop