曖昧な関係の境界線
「どうして別れたんですか?」
俺は迷いなく佐伯先輩の顔を見て聞いた。
「佐伯ちゃんからふったんだってー。佐伯ちゃん何で?」
「あ、あの……」
佐伯先輩の顔が赤くなる。
「いいじゃんそんなこと! 私お手洗い行ってくるから」
先輩は俺の顔を一切見ずにトイレに立った。
居てもたってもいられず、先輩を追ってトイレの通路で出てくるのを待った。
出てきた先輩は俺の顔を見るなり逃げようとする。
「先輩待って!」
俺の横を抜けて逃げようとするから腕をつかんだ。
「別れたんですか?」
「………」
「金城先輩と本当に別れたんですか?」
「長谷川くん……には……関係ないよ……」
「は? 関係ない? そんなこと言うと怒りますよ?」
「………」
「今までどんだけ先輩と関わってきたと思ってんの。その俺と関係ないなんてよく言えますね」
俺の顔を一切見ずにひたすら目を伏せる先輩に苛立ったが、もう会社を辞める俺には全てがどうでもよくなった。先輩をつかんだ腕を放した。
「そうですね、もう俺には先輩が金城さんとどうなろうと、どうでもいいです。でも俺は会社を辞めてもいつまでも未練がましくあなたを想ってます」