曖昧な関係の境界線
「………」
「お世話になりました。お元気で」
突き放す言葉をかけ席に戻ろうとすると、今度は先輩が俺の腕をつかんだ。
「金城さんとは、彼が結婚したときに別れた」
突然の告白だった。
「え? 結婚したときって……じゃあこの前キスしてたのは?」
「見てたの!? あれは……金城さんから強引に……よりを戻したいって……でも断った」
「断った……え?」
もしかしなくても、俺はずっと勘違いをしていたということか?
「何で言ってくれなかったんですか?」
「見られてたなんて知らなかったし……」
「俺てっきり……じゃあ彼氏とうまくいってるって周りに言ってたのは?」
「それは……長谷川くんのことだよ」
先輩は顔を真っ赤にしながら俺の目を正面から見た。
「最初は金城さんのことを彼氏って言ってたんだけど、途中から長谷川くんと重ねて話してた。彼氏と順調だって言ったのは金城さんに当て付けもあった……」
先輩の声はどんどん涙ぐんでいった。
「いつの間にか長谷川くんとの時間が大切になって……もう金城さんに振り回されて自分を壊したくなかったし……でも長谷川くんを好きになったら軽い女だと思われるから素直になれなくて……」
先輩の口から発せられる言葉に俺の口許はどんどん緩む。