夢の続き
逃げ去る?



誰かを呼ぶ?



そんなことをしてしまえば、間違いなく彼女は傷付き、その後の言葉や行動によっては立ち直れなくなってしまうかもしれない。

そう、今のいちかのように・・・



自分の手でそういう人を増やすことなど絶対にしてはならないと思ってはいるものの、僕は彼女に恐怖という感情を抱いてしまっている。


「部屋に入らないなら・・・

先輩が望むなら、今すぐここで私の体を好きにしたっていいですよ」


僕は驚いて言葉も出なかった。



近付いてきた彼女がいきなり羽織っていたコートを脱ぐと、その下には何も着ていなかったのだ。

服はもちろん、下着すら着けておらず、更にはコートも脱ぎ捨てて裸で僕に抱きついてきた。


「ちょっ・・・何してんだよ」


ようやく言葉を口から出し、慌ててアパートのドアを開けて、二人で中へと入った。

それから僕は靴を脱ぎ、部屋にある収納ボックスから適当にトレーナーとスウェットを取り出し、彼女に手渡す。

彼女は慌てている僕を不思議そうに眺めて、それらを受け取って顔を密着させた。


「先輩の匂い・・・」


「いいから、早くそれ着て帰れよ」


僕は思い切り目を閉じて、彼女に向かってそう言い放つ。
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