夢の続き
しばらく沈黙が続くと、わざとらしいほどのお茶を啜る音が響き渡った。


「それは、厄介だな」


シゲさんだった。



シゲさんは目を閉じたまま、胡坐をかいた太股に緑茶のペットボトルを何度も軽く打ちつけていた。

それを僕と有里香さんは、呆気に取られたように見入っていた。


「何も知らねえ、何も勉強していない俺はこの言葉で方をつけてもいいだろう。

だけど、お前たちは違う。

お前たちはどういうことか知っていて、それについて勉強している。

そして、目の前に『その人』がいる。

放っておくわけにはいかないだろう?

それがお前たちの勉強している意味じゃねえのか」


ペットボトルを床に置き、どこか満足そうな表情を浮かべてシゲさんは財布を探し始めた。

まるで、この話の結論はもう出ただろうと言わんばかりに、ビールの買い出しに出掛けるために。
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