夢の続き
「どうにかして、あの日は落ち着かせて帰らせたけど、あの時の目は今も忘れないよ。

きっと、何もしていなかったら本気で人を殺しそうな、そんな冷たくて殺意に満ちた目だった」


僕はゆっくりと横を見つめ、まさにそこに立っていた夕凪の姿を思い出す。

あのとき、そこで叫び、何度もフェンスを叩いて夕凪。

それは誰かが悪いというわけでもなく、何かが積み重なってそうさせてしまったのだろう。

けれども、あのときはそんなことすら思えなかった。


「有里香さんには悪いけど、夕凪はその日で有里香さんのことを僕の彼女と勘違いした。

夕凪のなかで、いちかは存在しないことになったんだ」


それだけで少し負担が減ったと口には出せないが、実際に思ったことは事実だった。

そのため、有里香さんには苦労を掛けることにもなったのだ。
< 125 / 132 >

この作品をシェア

pagetop