夢の続き
おじちゃんの言葉よりも早く、僕とシゲさんは笑いながら発した。

「やれやれ」と嬉しそうな表情を浮かべたまま、慣れた手付きで鉄板に肉を乗せていく。


「さっきの彼女がどうという話だけど、シゲちゃんにしろ、謙ちゃんにしろ、焦ることはないよ。

自分のペースで良い人を見つければいいさ」


その言葉で先ほど一瞬だけ漂った気まずい空気が一掃され、まさにおじちゃんの空気というものが立ち込めた。



この空気に何度助けられ、何度救われてきたか分からない。

それは僕だけでなく、シゲさんや有里香さん。

他にも僕たちが知らないたくさんの人たちが、きっと、おじちゃんのこの空気に救われてきたのだろう。


「そういうおじちゃんも、ね」


悪戯っぽく言うと、おじちゃんは後頭部に手を当てて声に出して笑った。


「こりゃ、参ったな」


こんなにも良い人なのに、おじちゃんには奥さんがいなかった。

離婚とかそういう話も聞かないので、バツイチというわけではなさそうだ。
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