夢の続き
「あっ、もう二時間もいるじゃん」


彼女の声に時計を確認すると、二時を少し回ったところだった。

店に入ったのが十二時少し前で、引っ越しの相談から始まり、何だかんだで二時間も話していたようだ。


「ごめんね、おじちゃん」


「いいよ、別に。

もう少し、ゆっくりしていってもいいくらいだ」


僕たちがいることは店にとっては何も得にならないのに、おじちゃんは嫌な顔を一つもせず、それどころか満面の笑顔でこちらを見てきた。

その笑顔からはとてもではないが、この人がプロの世界でマウンドに立っている姿など想像もできなかった。


「いや、久し振りだから、色々と散策するよ」


彼女は持ってきた荷物から何かを取り出し、カウンター席の上に置いた。

それはおじちゃんへのお土産のようなもので、案の定最初からここに来ることは計画のなかに入っていたらしい。

そういうところは、一緒に働いていたころとは全く変わっていなかった。
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