夢の続き
「あんたはどうするの?」


荷物を持ってきていなかった僕は、先に店の出入り口へと歩いていた。

窓から見える空は先ほどと変わらず真っ青で、散策するにはもってこいの天気だろう。


「僕は、もう用件は済みましたので」


「久し振りの私を堪能しようとは思わないの」


「また、会えますよ」


「そう言うけど、今日会ったのはいつ以来かな」


二人の会話をおじちゃんは厨房から眺めていた。

送るようにこちらに来るのではなく、顔だけ厨房から出して見送るのは、きっと彼女の飛び火が掛からないようにだろう。

賢明な判断だと思う。


「引っ越しが決まったら、また教えて。

都合が合えば手伝うからさ」


「はい」


「じゃあ、堂岡にもよろしく」


店を出て、僕たちはそのまま背を向けて歩き出した。

僕は駅のほうへ、彼女は気の向くままに。
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