夢の続き
「そんな、馬鹿なことを私がやるわけないでしょう」


慌てて女性を見ると、先ほどと変わらない優しい表情だった。

日差しが女性の表情をはっきりとさせ、僕は何だか恥ずかしくなり下を向いてしまった。


「福井弁です。

私、福井を出て三年ちょっと経つんですけど、ちょっとしたときにまだ福井弁が出てしまうんです」


理解できなかったかなり強烈な言葉は、そういうことだったのかと納得した。

しかし、翻訳してくれた言葉も分からなかったが、最初の言葉は更に早口ということもあってか日本語かどうかも分からなかった。


「もう・・・死んでほしくない。

何があったか分かりませんが、もし、あなたが何か辛いことを背負っているのならば、話を聞かせてください。

もちろん、話したくなければそれでもいいです」


話したくなければそれでもいい・・・



でも、自分ではもう分かっている。



このベンチに座ったということは、今会ったばかりのこの女性に話そうとしているのだと。



不思議な女性だ。

有里香さんとはまた違った雰囲気を持っているが、有里香さんと同じ優しさのようなものを持っている気がする。


ふと、前を見ると、三年前そこに立っていた叉渡(さわたり)いちかが見えた気がした。
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