夢の続き
僕は女性に向かって、思い切り走り出した。

そして、無我夢中で女性の右腕を掴み、こちらのほうへと力一杯に引っ張った。



この一瞬にあまりにも力を使ったため大きく肩で息をして、急行電車が通過していくと胸が熱くなった。

けれども、女性の表情を見て、その熱は一気に冷めた。

冷めるどころか、背筋が凍ったという言葉を思い知ることになったのだ。



全くの見ず知らずの男にいきなりこんなことをされたというのに、表情を全く変えない。

いや、表情というものがなく、まるで魂を抜かれたようで、こんな表情を見たのはそのときが初めてだった。


「・・・どうして」


相変わらず僕は肩で息をしていたが、これは思い切り走ったとか力一杯に引っ張ったとか、そんなことでしているのではない。

目の前にいる女性の表情に、怯えのような感覚が僕の体中を走ったからだ。


「どうして、私を死・・・」


最後まで聞くのが怖かった。



あのときは最後まで言わせたくなかったと、もっとものようなことを言ったが、今にして思えば僕は怖かったのだ。


「行こう」


女性の右腕を掴んでいた手を右手へと移動し、手を繋ぐようにして僕たちは階段を上がり、何事も無かったかのように改札を出た。
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