夢の続き
そんなことを思っていると、ホームが随分と慌ただしくなった。

どうやら電車が到着し、恐らくこの電車に待ち人であるメールの主が乗っていただろうと思い、改札へと足を走らせた。


「ごめんね、やっぱり待たせちゃったか」


その言葉とは裏腹に、あまり申し訳なさが感じない笑顔で市川有里香は改札を抜けてきた。


「いえ、遠いところをわざわざすみませんでした」


彼女は去年まではうちの会社に勤めていて、かなりの姉御肌と新人だった僕の教育係だったということもあり、相当にお世話になった。

二年目以降も同じチームに引き抜いてくれたりして、大人しい僕を何かと気遣ってはぐいぐい引っ張ってくれた。



「おいおい、遠い所って、電車での移動は四十分くらいだよ」


去年、寿退社を機にそれまで勉強していたもの本格的に活かすため、開業することになった。

現在は自宅兼オフィスがこの駅から乗換一回を含み、四十分ほど時間を要するところが最寄り駅になっている。
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