夢の続き
逃げ道だった。



最初は逃げ道だったが、この道を歩くことが僕の決断だった。


「じゃあ、その人を全力で守りなさい。

それが・・・男としての役目だ」


僕たちの間に冷たい風が吹き、その風は舞い上がり空へと消えていく。

空には珍しく星が散りばめられ、僕たちを見守っているようだった。



お父さんの言葉に僕は唇をきゅっと結んだ。

お父さんはゆっくりとこちらに近づき、横に来ると僕の肩を叩いた。


「もし、その人に対して少しでも手を抜いたら、そのときは・・・

美穂の父として、君を思い切り殴りに行くよ」


そして、家のほうへと歩き去る。



僕は慌てて振り返り、頭を下げようとした。


「『ありがとう』と言うつもりかね?

それは、言っちゃいけないよ。

分かるね?」


お父さんは振り向かずに、家のほうへと歩きながら右手を上げた。



言ってはいけない言葉。



流してはいけない涙。



僕はそれらを必死で堪え、「さようなら」とだけ呟き駅へと向かった。
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