夢の続き
「そうだったんですね」


ベンチに俯き加減になりながら、城野月柚葉はため息交じりに呟いた。

最初の明るい笑顔とは違い、彼女はかなり神妙な顔つきになり何かを考えているようだった。


「まあ、綺麗ごとのように言っているけど、一人の女性を傷つけたのは間違いないよ」


「そんなことないよ」


彼女はやや強めの口調で、それでいて敬語ではない言葉遣いで立ち上がりながら即答した。

僕は呆気に取られてしまい、少々間抜けな面をして彼女を見上げた。



空が夕陽に照らされてオレンジ色に染まっているように、彼女の顔もオレンジ色に染まっていた。

それが妙に美しく見え、僕は間抜け面のまま彼女を眺めていた。


「いいんだよ、事実は事実だ。

それに、それからすぐにまた僕は一人の女性を苦しめることになるしね。

だけど・・・」


駅のホームを見渡せば、夕方になり帰宅ラッシュが近付いてきたためか、各駅停車しか停まらないここも人が多くなってきた。

とてもではないが人が大勢いるなかで話せるようなことではないと思い、今日はもうここまでというような仕草を作ってみせた。


「今日はありがとうございました。

必ず、また」


彼女はそう言って、改札に続く階段を颯爽と駆け上っていった。
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