夢の続き
夕凪穂香(ゆうなぎほのか)
最後に一人の女性の名前が出てきて、僕は思わず後ろを振り返ってしまった。
「そんなことしていたら、怒られますよ」
偶然か、そこには城野月柚葉がどこか誇らしげな顔をして仁王立ちしていた。
どうやら、いつも怒っている僕への仕返しのように思っているらしい。
「大丈夫だよ。
今日はそんなことをするような二十代後半の男はいないから」
彼女から視線を外して前を向き、その注意を気にも留めないような口調で言った。
「あっ、ずるい」
そんな態度に困ったようで、彼女は幼い少女のような声を出した。
僕はそれを聞いて、小さく笑い飛ばす。
彼女は僕のその態度がお気に召さなかったようで、少々強引に僕の隣に腰掛けてきた。
「おいおい、流石に駄目だろ」
「全然、説得力がないです」
仕方がないと諦め、僕はゆっくりと立ち上がりベンチへと移動した。
日差しがとても眩しく、これから三週間はこの日差しすらも気に掛けられないくらい大変になるのだと不意に思う。
けれども、今はどうでもいい。
「はい、説教する二十代後半の男の登場」
そう言うと、もう一度「ずるい」と言い、彼女も立ち上がりベンチへとやって来た。
そのまま彼女に言われたわけでもなく、僕は話の続きを始めた。