それは…好きだから。(彩佳side)
つながっていたくて
「今日中にインタビュー記事をまとめておいてくれ」

 たった今、営業部で取材してきた記事に目を通しながら、和田課長の言葉にわたしは頷いて返事をした。
 課長の仕事の予定時間が押していたから、わたし達は廊下で話をしている。

「確認までしたいところなんだが、今日は無理そうだな。明日、朝一に提出してもらえるか?」

「はい。大丈夫です」

「それじゃ、明日」

「行ってらっしゃいませ」

 忙しい課長に労いの意味も込めて、わたしは頭を下げて送り出す。
 和田課長は微笑んで、次の打ち合わせのために出かけて行った。


 わたしは、川島彩佳(かわしまあやか)。広報課に所属している。

 和田課長はわたしの直属の上司。
 わたしの主な担当は月一発行する社内報。
 今日は社員の紹介コーナーの取材のために営業部にお邪魔した。

 様々な精密機器の製造・販売を手掛けるこの会社の花形は、研究開発部と営業部。
 そのためかエリート社員が多い。

 会社の中枢を担っていることもあって、二つの部署は社内報に掲載する頻度が高い。

 いつもならわたしが、営業部の担当になることは絶対にないのだけど、
 指定された日時に、空いている女子社員が珍しくいなかったため、
 急遽、同行する課長から指名されたのだった。
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