多重人格者【完結】
トラウマ
登校して、草野君と別れた後、教室に入ると待ってましたって感じの葉月がそこにいた。
目をキラキラさせている。
「何、一緒に登校って…やっぱり付き合ったの?」
「いや、そうじゃないよ」
「えええ。でも、これってすっごい進歩じゃん!」
「うん、本当にそう思う!
葉月のお陰だよ、ありがとう」
本当に、私は。
葉月のお陰で全てを思いだす事が出来たんだ。
葉月の所為で、では決してない。
「何言ってるの、私はきっかけ作っただけでそれからはあやめの力でしょ」
葉月は照れた様に笑うと、私を肘でつついてくる。
もしも、あの時。
草野君と会わなかったら、私は一生カンナの存在を知らなかったかもしれないんだ。
ただの違和感で終わらせていたかも。
そのきっかけがあんな事だったとしても、だ。
どんな内容であっても、私は私の中の住人の存在を知る事が出来てよかったと思っている。
その日の放課後、葉月と約束をする事にした。
先にしておかないと、草野君が来るかもしれないし。
ああやって話したけど、私は草野君と下校まで一緒に行くつもりはない。
明日から、時間をずらして登校もする。
なるべく一緒にいない様にするんだ。