多重人格者【完結】

≪夜が、怖いね。あやめちゃん?…クク、ククク。あはははっ≫


カンナの高笑いが頭に響く。

やめて。
やめて。


すーっと私の瞳から、一滴の涙が伝う。


「おい、あやめっ?」


カンナは私を苦しめて、喜んでる。
ダメだって。
負けちゃダメだって。

何度も思うのに。


私が、悪かったの?


私が、…私が?



「あやめっ!!!どうしたんだよ!!」

「っ!」


がしっと肩を掴んで、無理矢理自分の方に向かせると草野君が大声で叫ぶ。
それにハッとして私は我に返る。

目の前には眉根を寄せて、心配そうな瞳で見つめる草野君がいた。

< 111 / 309 >

この作品をシェア

pagetop