多重人格者【完結】
「……」
「ほら、可愛いって」
「何も言ってねえだろ」
「顔が言ってたあ~」
ニヤニヤしながら、再度心君の肩を叩く奈乃香さん。
鬱陶しそうな顔をしながら、奈乃香さんを見る心君。
それから、私を見ると気まずそうに一言。
「あー、確かに似合ってるよ」
お風呂で温まった所為でなく、顔が火照って行くのがわかる。
「何それ。女の子は正直に可愛いって言ってもらうと嬉しいのよ?
心もまだまだね」
「…オバサンがいつまでも女の子って言ってるなよ」
「何だって!?」
ギャースカ言い合う二人を見て、私は声を上げて笑った。
少しだけ、肩の力が抜けた気がした。
それから、奈乃香さんがお風呂に入る。
二人きりになって、変な緊張が私を包んだ。