多重人格者【完結】
一緒に並んで下校。
そんなこと、もう何度も夢で見た。
妄想もした。

だから、今のこの状況。
本当に信じられない。


ドキドキをもう通り越して、バクバク?
あー…喉、カラカラだ。

ハッ!
唇乾いてないかな。
こんな子、嫌じゃないかな。

唇カサカサなんて、酷い。

咄嗟に、私は制服のポケットに忍ばせているリップクリームを取り唇に塗った。


「ねえ」

「え」


ぴたっと、手を止めて私は草野君を見上げた。
身長が150前半の私は、180近くある草野君を見上げないと、その顔が見えない。


「一之瀬のこと、あやめでもいい?」

「!!!」

ああ、もう。
キュンキュンして、もうやばいです。


コクコクと何度も首を縦に振る。


「そっか、よかった。
俺の事も呼び捨てしていいから」

「そ、そんな」

「なんか、草野君って遠いよね」

「…遠い?」

草野君は両手を頭の後ろで組むと

「そー!だから、俺の事も心でいーよ」

そうやってにかっと、眩しいぐらいの笑顔を見せた。
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