多重人格者【完結】
―――――――――――
―――――――――――――…




アタシはパシっと胸倉を掴んだ女の腕を掴むと、ニヤっと口角を上げた。


「いい度胸だね。でも、それは他に使った方がいいんじゃない?」

「……は?」


目の前の女だけじゃない。
後ろの女も、突然のその発言に目を丸くした。


あやめが言うはずのない言葉だったからだ。



「あはは。何、その顔。
土下座して謝るって言うなら許してやるよ?」


アタシは馬鹿にする様に笑いながら、女達に向かってそう言った。

これは。
脅しでも何でもなくて、本心。


見た目ばっか着飾って、中身磨けよな、まじで。
肌、ボロボロだよ?


「何でお前に謝らなきゃなんないわけ?」


それにも何も言わず、アタシは口元に孤を描くだけ。


目の前の女達は、アタシの様子に少なからず動揺してるみたいだった。


……大人しそうな女なら簡単に手を引くだろうってわけ?


それとも、自分より劣ってる筈なのに草野の隣にいるのは許せないって?
< 178 / 309 >

この作品をシェア

pagetop