多重人格者【完結】
「………し、心君…」

「君なしにしようよ」

「無理です」

「えー?じゃあ、君付けて言うごとに俺のお願い聞いてね?」

「お願い?」


心君が、急に目を細める。
そして、口角だけをあげてニヤっと笑った。


「そう、お願い。ね?約束」

「……うん」

その、“お願い”と言うものがわからなくて、少し不安を覚えたけど。
だけど、心君に嫌われたくない私はそれを受け入れる。


それしか、私には選択肢がないような気がしたから。


「俺のいつも行くコースでもいい?」

「うん!」


心君がいつも行くコース。
そんなの夢みたいだ。
嬉し過ぎる。

私からしたら心君と、下の名前で呼べるだけで嬉しくて顔がにやつくのに。
いきなり呼び捨てなんて絶対無理だ。

だから、徐々に…慣れて行かないと。


「なあ、あやめ。
まず、ゲーセン行こうよ」

「ゲーセン?」

この街のゲーセンと言えば、心君みたいな少し不良なグループが集まっていて一度も足を踏み入れた事がない。
そんな場所も、心君となら入れちゃうのか。


ちょっと、明日葉月に自慢しないとだ。
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