多重人格者【完結】
「大丈夫だよ、葉月」
目を細め、ニンマリとしてからアタシはそう言った。
だけど、葉月の顔は青ざめている。
隣の草野も同様に。
草野は一歩前へ踏み出すと、
「…あやめは」
そう尋ねる。
あーあ、いいの?こんなに人がいる前でそれ聞いて。
別に答えてもいいけど?
「言っていいわけ?」
そう、一言だけ告げると草野はハッとした様に目を見開いた。
「あ、いや。“あやめ”、こっち来い」
ニコリともせずに、アタシの腕を強引に掴むとトイレの外へと出る。
暫く校内を歩いていると、頭上でチャイムが鳴った。
授業出なくていいんですかねえ?
草野は階段を上がり屋上前の踊り場に着くと、やっとこっちを向いた。
そんな草野の顔を、薄ら笑みを浮かべて見つめる。