多重人格者【完結】


ぱちっと目を開ける。
…どれだけ意識を失っていたんだろうか。


ぐっと身体を起こそうとするが、全身に痛みが走り、顔を歪めた。


「…ああ、くそ」


ぼそっと呟くと、どうにか起き上がり壁にもたれかかる。
肩で息をしながら、さっきの事を思い返した。



今朝、あやめに話した自分の言葉で“もしかして”、そう思った。



“まあ、あやめが望むなら俺が親父さん殴ってもいいよ?
二度と手を出すなって言って、さ”



そんな思考に辿り着いた時、もしかしたら俺以上にあやめ…いや、カンナ達は義父を憎んでいるんじゃないかって。

殴る、蹴るとかの生温い考えでなく。
カンナの事だ。
自分に危害を加える義父を殺そうとしてもおかしくないと。


だから、カンナは自分の計画を邪魔するなら許さねえって言ったんだ。


…当たり前だ、止めるに決まってる。


そうしたら、あやめは犯罪者になるんだ。


それで喜ぶのは誰?

……あやめの中の人物達だ。
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