多重人格者【完結】
「俺のツレとかいるかも。
だけど、そん時彼女って紹介しなきゃ」

「え?」

心君の言葉に耳を疑う。


「…なんて…?」

きょとんとしている心君。
目がくりっとしていて、そんな顔も一々カッコいい。


「何が?」

「今、心君…彼女って…」

「あー…、俺のツレ手癖悪いからさ。
彼女って言わないときっとちょっかい出すからさ」

「…そう、なんだ」

ああ、心臓が止まるかと思った。
もう、言い方が悪いよ。

私が好きなの知ってるはずなのに。
意地悪だ。


「ま、でも、近い内ね?」

「ええ?」

戸惑う私に、心君は悪戯な笑みを浮かべる。


「今、あやめ俺の事“君”付けて呼んだから俺のお願い聞いてね?」

「あ」

動揺して、つい、君付けてしまった。
でも、私からしたら草野君と言わなかっただけマシと言うか…。

だけど、目の前の好きな人は許してくれるはずもなく。
お願い何にしようかな、とルンルンしながら考えている。
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