多重人格者【完結】
あー、そうだ。
さっきの女達にも言っておかないとな。
あやめに手を出すなって。
カンナが言った事はあながち間違ってはいない。
俺の所為ってのはあるからな。
本当に女ってのはめんどくさい。
特別棟から教室の方へ、ゆっくりと歩く。
そこにバタバタとうるさい足音がして、眉を顰めた。
……廊下は走るなって言われただろ。
とか、至極真っ当な事を考えてみる。
「草野君!」
って。
俺?
名前を呼ばれた事に驚きながら、振り向くとそこに立ってたのはあやめの親友の葉月だった。
葉月ちゃんは不安そうな顔で俺を見つめる。
相当走り回ったのか、それはわからないが肩で息をしていた。
「だ、いじょうぶ?」
途切れながらも、そう尋ねて来る。
「大丈夫」
痛みを我慢しながら、俺はニッコリと微笑んだ。
こうやって誤魔化すのには慣れてる。