多重人格者【完結】

「……あの、その…」


どことなく歯切れの悪い葉月ちゃん。
言いたい内容はわかっちゃいるけど、敢えて何も言わずに俺は言葉を待つ。


その間も笑みは絶やさない。



「……あやめって…本当のあやめって…今朝見た感じなの?」


どう返すべきか。

葉月ちゃんには知られたくないと言ってたあやめ。


でも、多重人格者と言う事を教えなければいいか。



「驚いちゃったよね?」

「え?」


やっぱり笑みを絶やさない俺を、葉月ちゃんは間の抜けた顔で見つめる。
返事を待たずに続けた。


「ほら、普段大人しい子が切れると怖いってよく言うじゃん?」

「……まあ、うん、確かに」

「俺もちょっと吃驚したけど、そんなあやめも大好きだからさ」

「えっ?」


納得いかない感じの葉月ちゃんに、さらっと伝えてやった。
俺の気持ちを。

案の定、葉月ちゃんは目を見開き何度も瞬きを繰り返す。
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