多重人格者【完結】
「今朝、おかしなあやめを見たからそう思うだけじゃない?」
「…そう、かな」
「うん。そうだよ。それに葉月ちゃんにそう思われたら、あやめ悲しむよ。
普通に接してやってよ」
「……だよね」
わざと、あやめを引き合いに出してみる。
あやめを想ってるなら、あやめが悲しむなら。そう思うだろうから。
我ながらずるい言い方だ。
そんな自分に嘲笑してしまう。
それでも、カンナの事は葉月ちゃんに知られたくなかった。
まだ納得してなさそうだったけど、もう深く突っ込むつもりはないらしい。
葉月ちゃんに「教室に戻ろう」と促すと、頷いた。
教室に戻り、葉月ちゃんを見送りながら俺は中を見渡す。
……あやめは。
―――――――――いた。