多重人格者【完結】
騒がしい教室内。
誰もが、誰かと話をして笑っているのに。
ぽつんと、机に座りずっと外を眺めている。
葉月ちゃんは真っ先にあやめの元へ行くと、笑みを零す。
彼女の存在に気付いたあやめの視線が、ふっと俺に向いた。
視線が絡んで、ドキッとする。
俺を暫く見つめたあやめは、一瞬ニヤっと含んだ笑いをした。
……。
きっと、まだあやめに戻ってないんだ。
どうしたらあやめを戻せるのか、わからない。
だけど、放課後必ず捉まえてやる。
俺はあやめの目をしっかりと見据えて、声には出さず口だけを動かす。
(逃・げ・る・な・よ)
あやめは笑みを崩さないまま、目を細めた。
俺も口角を上げると、あやめの教室を後にした。
放課後になって、真っ先に向かうのはあやめの教室。
中を覗き、あやめを探す。
いたいた。