多重人格者【完結】
「あやめー!」
後ろ姿のあやめを大声で呼んだ。
ゆっくりと振り返るあやめ。
あやめはカバンを持つと、真っ直ぐに俺の方へと向かって来る。
目の前に来て、ニッコリと微笑む。
「心君」
「帰ろうぜ」
「うん。葉月もでしょ?」
「…ああ」
「葉月ーっ」
あやめは葉月ちゃんを呼んでいた。
確かに。
傍から見たら、あやめにしか見えない。
だけど、違和感を感じるのはきっと俺は“さっきのヤツ”を見てるから。
「お待たせ、あやめ、草野君」
「ううん、葉月、今日はありがとう」
「えっ、だって、そりゃあ、…ね?」
葉月ちゃんはさっき俺が言った事を思い出してるのか、ニヤニヤとしている。
親友の朗報は、そりゃ嬉しいに違いない。