多重人格者【完結】

「何があったかは明日教えてよね」

「うん、わかった」

「え。言うの？あやめ」

「え。ダメ？心君」


髪の毛を揺らして首を傾げるあやめ。
俺にだけ顔を向けると、ニヤリと笑った。

それにゾクっとする。

それはあやめの顔なのに、あやめに見えなかったから。


「……」

「どうしたの？心君」


口元に笑みを乗せて俺にそう言うあやめ。
だけども、目は全く笑っていない。



「いや、出来たら言わないで欲しいな。
恥ずかしいし」

「ああ、そっかあ！だよねえ、ごめん。草野君」


様子がおかしい事に気付いてない葉月ちゃんは、そうあっけらかんと言った。

すぐにあやめと葉月ちゃんの世間話が始まる。


俺はその会話に入る事なく、黙ったまま。