多重人格者【完結】
恐ろしい愛

――――…ここは酷く暗い。




どれだけの時間が経ったのだろう。


毎日何気なしに見ている空とか、太陽とか、そんな自然達は日々の生活の中でこれほど重要なモノだったんだと気付く。


時間がわからない。
暗くもならないし、明るくもならない。


目の前に広がるのは、漆黒だけ。
ただの、黒。闇。



涙なんて、出ない。


ただ、早く終わってしまえばいいのにと思う。


膝を抱えて蹲る私の前に、誰かが立った。


一言。


≪あやめ≫


そうやって、私を呼ぶ。


ぴくりと、身体が反応した。
それからゆっくり。
ゆっくりと。


私は顔を上げて、私の名前を呼ぶ人を確認する。


その人物は、不思議な色をした瞳を揺らしてニッコリと微笑んだ。
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