多重人格者【完結】
「それじゃ、おやすみ」
「……」
くくくっと喉を鳴らして笑いながら、殺樹は扉をしめる。
その扉を俺は暫く睨みつけていた。
何か、出来る事はないんだろうかと。
何度も何度も考えた。
でも、俺に出来る事なんてあるのだろうか。
どうしたって、全てはあやめが出て来ないと始まらない。
あいつらに話したって、かわされるに決まってるんだ。
焦りと、苛立ちがただただ募っていく。
……あやめ。
お願いだから、戻って来てくれ。
無力な俺は、ただそうやって願う事しか出来なかった。