多重人格者【完結】
私のした事
――――…ここは酷く暗い。
≪あやめ≫
誰かがそう私の名前を呼ぶ。
…私の名前?
あやめ、そう私の名前はあやめだ。
≪あやめ?≫
また、私を呼ぶ声がする。
「誰?」
久しぶりに出した声に違和感を感じた。
どれだけここにいたんだろうか。
≪……外に出たい?≫
「外?」
≪ああ、外≫
「……」
≪悩んでるの?≫
「出ていい事なんてあるのかな」
≪ないだろうね≫
「じゃあ、出る必要ないかな」
≪……≫
「……」
≪……草野君には会いたくないかい?≫
「……く、さの、君?」
草野、心。
心君に?
会いたいか?
会いたい、会いたいよ。
会いたい。
葉月にも会いたい。
きっと、あの時私が自我を手放してしまった所為で、迷惑掛けてる。
葉月の事だ、心君に絶対連絡してる。
カンナと、心君が対峙したらどうなるかなんて。
……どうなるかなんて、わかんない。