多重人格者【完結】

カンナの声が響いてから、消えて行く。
それからは私の質問に一切答えなくなったから、本当に中に消えてったんだと思う。


両手で頭を抱え込む。

ドクンドクンと心臓の音だけがやけに耳に響いた。


片方の手を携帯へと伸ばす。
それから、心君のアドレスのページを開いた。


通話を押せば、すぐにでも電話がかかる。
だけど、それは出来ずにいた。


葉月も同じ。


二人には何もしていないかな。
葉月にはバレてしまったんだろうか。

……いや、騒動を起こしたんだからバレてるよね。


心君が止めてくれてなければ死んでたって。


クラスメイトの目の前で?
それとも、また女子トイレとかで?


どっちにしろ、この事を知ってるのは心君と葉月だけではなさそうだ。


何で、こんなに現実感がないのだろうか。
実感だってない。


あの日、カンナが人を殴った時の様に手が青くなってたりもない。
傷とか、痛いとことかもない。


カタカタと震えるのはどうしてだろう。
殺樹のやる事は際限がなさそうで、怖い。


何でもしそうで、怖い。


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