多重人格者【完結】
「何を!あやめっ!!!」
「邪魔すんじゃねえ!!」
「ふざけんな!」
ベッドで震えるそいつ目がけて急ぐ。
グサリ。
確かに、肉にぶすっと突き刺す感触を感じた。
だけど、それは。
アタシが刺したのは。
……草野の、身体だった。
「うわあああっ」
そいつは、アタシが殺したかった男は情けない声を出して、足をもつれさせながら部屋を飛び出した。
「……邪魔するなって言ったじゃねえかよ」
アタシは静かに包丁から手を放すと、そうぽつりと呟く。
「……、カンナ、か?」
「……」
「くく、はは。……ざまあ」
そうやって、草野は顔を歪めながら口角を上げるとドサっと倒れ込む。