多重人格者【完結】


「何を!あやめっ!!!」

「邪魔すんじゃねえ!!」

「ふざけんな!」



ベッドで震えるそいつ目がけて急ぐ。



グサリ。



確かに、肉にぶすっと突き刺す感触を感じた。

だけど、それは。

アタシが刺したのは。



……草野の、身体だった。



「うわあああっ」


そいつは、アタシが殺したかった男は情けない声を出して、足をもつれさせながら部屋を飛び出した。



「……邪魔するなって言ったじゃねえかよ」



アタシは静かに包丁から手を放すと、そうぽつりと呟く。



「……、カンナ、か?」

「……」

「くく、はは。……ざまあ」



そうやって、草野は顔を歪めながら口角を上げるとドサっと倒れ込む。

< 295 / 309 >

この作品をシェア

pagetop