多重人格者【完結】
アタシは真っ赤な鮮血で染まった両手を、呆然と見つめる。
その時、嫌な高笑いが頭の中に響いた。
≪くく、あっはは≫
「……殺樹、てめえか」
一頻り笑ってから、殺樹は声を響かせる。
≪これは賭けだった。
草野君が来ても、庇うなんて保証はなかった。
まあ、どっちでもよかったからな。
俺にとっちゃ、あの男が死のうと、草野君が死のうとね≫
“どっち”でもよかった?
≪想像以上にいい動きだったよ、カンナ≫
その声はとてつもなく嬉しそうで。
≪くくく、あはははっ≫
高笑いする声が、耳障りだ。
アタシは、殺樹にとったらただの手駒。
都合良く動かせる為の。
全ては、あやめを手に入れる為の。