多重人格者【完結】
何もかもがあいつの思い通りだったのかよ。
姿見に映るアタシの、あやめの姿。
無表情で、ぴくりとも動かないその顔。
ゆらゆらと、鏡に近付いた。
「……何の、為に……」
今まで計画を一人で練って来たんだ。
この日の為だけに、練って来たのに。
≪……知ってたよ、カンナ≫
「……は?」
その声は昴のモノだった。
アタシは昴の発した言葉の意味がわからずに、昴の顔を、いや、鏡に映る自分の顔を見つめる。
≪カンナがあいつを殺そうとしてた事…俺達知ってたよ≫
「………な、んで」
ハッとして、殺樹かと考えるが、すぐに昴が否定した。
≪違う。最初から知ってた≫
「………」
≪俺達も、殺したかったんだよ≫
≪そうだよ、カンナ≫
それにユウナの声が混ざる。
「……はは、バカ、みてえじゃん、私」
スーッと、アタシの頬を何かが伝った。
確かめなくたって、わかってる。
≪俺達は知ってて、黙ってた。カンナ。≫
≪カンナ、ごめん。だけど、ありがとう≫
「……」