多重人格者【完結】
「…死な、ない。
お、れは…死なな、い。
だ…から、あやめは、ころ、してなんか、いない」
血だらけの手で、心君は私の頬に触れる。
涙で、前が滲む。
「だ、いじょ、うぶ」
そう言った後、ぱたりと手が私の膝に落ちた。
「心君?」
扉の外で誰かの悲鳴が聞こえて、暫くして外も騒がしくなる。
だけど、私には何も聞こえなかった。
「……し、ん君」
離れないって、言ったよね?
私から離れないって。
まだ、言えてない。
好きだって言えてない。
ちゃんと心君は伝えてくれたのに。
私は口にしてないよ。