多重人格者【完結】
やだよ、心君。
お願いだから、死なないで。
涙が次々に溢れて、言葉になんてならなかった。
お願い、心君だけは。
私から奪わないで。
救急車で運ばれて行く心君。
そして、私はパトカーに連れられて行く。
怯えた顔をするお母さんや、お義父さん。
その周りには大勢の野次馬。
取り調べをされたって、何も答えられない。
気付けば、心君が倒れていたんだから。
刺したのが誰かなんてわからない。
だけど、私なんだろう。
きっと。
≪……あやめ?≫
両側に警察官がいて、拘束されている。
その私の頭に響く、殺樹の声。