多重人格者【完結】
≪いるのは、俺だけ。
そして、あやめ。君だけ≫
嘘だ、嘘。
≪草野君を刺したのも、君だ≫
やめて、やめて。
「君、どうしたんだ?」
ガタガタと震える私の様子に気付いた警察官が、尋ねるけど。
私の耳には届かない。
≪……忘れちゃったの?
グサッと“心君”を刺した時の事を≫
真っ赤な手の平。
心君の体から染みて来る、真っ赤な液体。
「やめてえええっっ!!!!!」
クククと響く、殺樹の笑い声。