多重人格者【完結】
≪俺が出来たのは、いつかわからない。忘れてしまった≫
≪……≫
≪でも、そんな事はどうでもいい。
要件はそんな事じゃない。
多分、俺とカンナは似ている≫
≪…はあ?アタシとあんたが似てるだって?≫
≪ああ。カンナは義父を殺したいのだろう?≫
≪……!!!≫
その言葉に、さすがのカンナも驚きを隠せなかった。
殺したいと思っているのは、誰にも話した事なかったのだ。
他の人格にも。
目が泳いでいるカンナを見て、殺樹の中でそれが確信に変わった。
殺すって事を本当に思っていたわけではない。
そうではないか?の疑問を含めた言葉ではあった。
だが、あのカンナの動揺している姿。
“カンナは義父を殺したいと思っている”
殺樹にとってみれば、それだけわかればかなりの収穫だった。
≪そうか、実はな、俺も殺したいと思っていたんだ≫
≪……≫
カンナは無暗に何かを発せようとはせず、殺樹の言葉にじっと耳を傾ける。
一字一句漏らさぬ様に。