多重人格者【完結】
≪今、俺は自由に外に出られる様に動いている。
だから、それをカンナは利用すればいい≫
≪あんたのメリットは?≫
≪ん?メリット?≫
≪アタシがあいつを殺したとして。殺樹のメリットは?≫
≪…逆に、君は何かメリットがあると思っているのか?≫
≪……もう、あいつの顔を見る事がなくなる≫
何て、単純明快な理由。
殺樹はそう思った。
だが、裏を返せばそれほどまでにあの男を憎んでいる証拠だ。
≪あの男を殺せるのならば、俺だってそれでいい≫
≪……≫
どこか、胡散臭さをカンナはさっきから感じていた。
殺樹は本音で話している様に見えるが、何かを隠している。
それだけは明らかだ。
だが、もしも自由に外に出られるのならば都合いい事に変わりはない。
ここにアタシがいて、殺樹もいるのなら今外にいるのはあやめなのだから。
昴も、ユウナも考えられなかったし。
カンナは少し考えてから、観念した様に
≪わかった。どうすればいい?≫
そう発した。
それに殺樹は内心で笑った。