多重人格者【完結】
「…俺ね、遠慮しないから」
「………」
「あやめに何て言われようと、俺はもうあやめを放っておけない」
「…何で?」
「何でって言われてもな。わかんない。
でも、あやめが苦しそうな表情見るの、辛い」
「…お願いです、構わないで下さい」
「嫌だって言ったら?」
「どうしてっ、好きじゃないなら構わないでっ!!」
「あっ、あやめ!」
叫ぶと私はなりふり構わず、走り出す。
その後を追いかける草野君。
そんな、私と草野君を見ていた人がいただなんて。
――――私は草野君から逃げる事に夢中で、全く気付いていなかった。
走って暫くしてから、私が草野君を振り切れるはずもなく、がしっと腕を掴まれる。
だけど、後ろは振り向かない。
はあはあっとお互い、肩で息をしながら立ち止まったまま動かない。