多重人格者【完結】
「…理由なんてどうでもいいだろ」
「草野君は私にした事への罪滅ぼしなんだよ」
「違う。それだけはない」
「…それ以外の理由ってなんだって言うの?」
私は草野君をキッと睨みつける。
草野君は瞳を揺らしながら、肩を竦めた。
だけど、掴んだ手を放すつもりはないらしい。
そこだけがまるで熱を持った様に熱い。
「……俺。今まで罪悪感なんて感じた事なかった。
昔からモテたし、女なんて皆同じだって思ってた。
だから、…あんな事をした後の女に自ら近付いた事なんてなかった」
嘲笑しながら話す草野君に目を見張る。
その、事実に言葉が詰まった。
レイプをして、罪悪感を感じた事なんてなかった…?
眉を顰めて、視線を落とすと私はそんな想いを巡らす。
そこに。
≪ホラ、草野って…本当に下衆だよな?≫
カンナの声が響いた。
続く、不快な高笑い。
更に眉を顰めると、私は草野君を真っ直ぐに見た。