多重人格者【完結】
「信じてないでしょ?」
「うん、全く」
いかにも、当然といった感じで即答する草野君。
まあ、そりゃそうなのかな。
草野君を拒んでたのは、漠然とした不安があったから。
その漠然とした不安って言うのは、もしかしたら…。
“私の中の恐怖”なのかもしれない。
草野君を男として、異性として、恐怖だと思う私の心の奥底にある気持ちなのかも。
でも、もう何もしてこないって言うんだったら。
私は大丈夫な気がする。
何もかもが怖くなっているから、少しは信じられる事を見つけてもいいよね。
もしも。
次に草野君が私を裏切るなら、その時は本当に壊れてしまうかもしれないけど。
「あやめ、なあ、俺達付き合ってるって事にしないか?」
「え?」
その提案に、今度は私が目をぱちぱちとさせる。