多重人格者【完結】
「そうかー。いい案だと思ったんだけどな。
いきなりあやめに俺が構ってたらおかしいと思われない?
あやめが大丈夫?」
「大丈夫。それにそんなぴったりくっつく必要もないよ、草野君」
「何で?俺、登下校毎日一緒にいようって思ってたんだけど」
「…それは遠慮します」
「ええ?」
「さすがに私も友達と出かけたりしたいし。毎日は…」
って言ったけど、実際はもう誰とも出かけられないと思う。
“これ”が解決するまでは。
もしかしたら一生、解決しないかも。
…そしたら葉月と会う事もなくなるのかな。
いきなり他の人格に代わって、何かをしてしまったら。
この事がバレたら。
何があるかなんてわからない。
大事な人を傷付けたくない。
それを守れるのは、私しかいないんだから。
「そっかー。だよなあ。あやめも出かけたりするよな…」
ううんって唸る草野君に、私は曖昧な笑顔を返した。
返すしかなかった。